會田龍雄先生 67才

1. はじめに

メンデルの法則が再発見 (1900) されてからおよそ 10 年後、我が国で石川千代松博士 (1913) と外山亀太郎博士 (1916)、石原誠博士 (1916) の 3 博士によってメダカの体色が交配実験によりメンデルの法則に従う遺伝で在ることを報告した。このことは現在に至るメダカ遺伝研究の出発点であったが、三博士の発表後は後継者がいなくメダカの研究は途絶えていた。

私の師である會田龍雄は 1913 年(大正 2 年)から自宅でメダカの遺伝研究を開始し、オスメダカに特異的な形質を示す限性遺伝を発見するなど、国際的に評価の高い発見を多数おこなった。8 年間を要したその研究結果を R.B.Goldshmitd 博士の薦めにより、米国の遺伝学雑誌 Genetics に投稿し発表 (1921, 1922, 1930) した。

現在は多くのメダカ研究者によって、最先端の遺伝子工学を利用しゲノム編集技術、やメダカ個体の全ゲノム配列を決定したりするなど分子遺伝学分野の多岐に亘る研究材料でもあります。メダカを研究する人達は「メダカ遺伝の先駆者會田龍雄」の名前や彼の研究業績は知っていても、會田先生の生涯がどのような人生であったか知る人は少ないと思います。龍雄先生の実像に接し、先生から直接指導を受けた者は筆者一人と成りました。今は筆者も高齢(2020 現在 88 才)となり、恩師の生涯に纏わる研究・特技・趣味などを書き残し、先生の生涯がどのような姿であったかを後に伝える責任を感じ、生前の先生から直接伺ったことや、ご子息の雄次先生と裕子夫人、そしてご息女芳子さんから伺ったことなど、加えて先生の遺品などを基に、筆者の知り得たことを書き残すことにした。(令和 2 年、2020)

/medaka